診療科腎臓内科

Nephrology

概要

検尿異常(蛋白尿・血尿)から血液透析や腹膜透析が必要になる末期腎不全にいたるまでの慢性腎臓病(CKD)の診断・治療を行います。腎臓の機能(はたらき)が急激に低下する急性腎障害(AKI)の治療を行います。透析を行っている末期腎不全患者さんが手術などで入院される際のサポートを行います。

慢性腎臓病では、早期診断・早期治療が腎不全にならない最善の方策です。学校・職場健診などで尿の異常を指摘された際は、他に症状が無くても受診をお願いいたします。
外来初診時には、かかりつけの先生の紹介状や健診の結果などの資料をできる限りご用意ください。また、他院でお薬をいただいている方は、お薬手帳など処方の内容がわかるものないしお薬すべてをご持参ください。

主な
施設認定

  • 日本腎臓学会研修施設
  • 日本透析医学会教育関連施設

主な専門医指導医

  • 日本内科学会総合内科専門医、指導医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医、指導医
  • 日本透析医学会透析専門医、指導医

特色

静岡県東部・伊豆地区の基幹病院としての役割を果たすため、当科では以下のことを行っています。

  1. 腎生検による組織診断
    腎臓病には多くの種類がありますが、治療が有効な早期では痛みなどの苦痛を伴う自覚症状がない場合が多く、蛋白尿・血尿などの尿の異常しかみられません。一方、むくみが突然生じるネフローゼ症候群にもいろいろな疾患が含まれており、それぞれの疾患に対して行うべき治療は異なります。血液や画像の検査だけでは、こういった患者さんに対して正確な診断を下すことは不可能であり、適切な治療を選ぶことはできません。この問題を解決するために、腎臓の組織を一部採取し、顕微鏡で組織の構造を観察する経皮的針腎生検を行います。腎生検では腎臓からの出血などのリスクがあるため、 (1)腎臓専門医および検査を補助する看護師、 (2)経過観察のための入院施設、 (3)得られた腎臓の組織を適切に処理する検査職員、 (4)組織から適切な情報を読み取り診断を下す病理医、 (5)合併症に対処する施設・人員のバックアップ が存在する施設でしか行うことができません。当科では、腎生検をルーチン検査として行うことが可能であり、件数も増加しています。2021年度は、20件行いました。
  2. バスキュラーアクセス作成
    治療のかいなく、自前の腎臓のはたらきが失われた末期腎不全患者さんは、血液透析・腹膜透析・腎移植のいずれかを行う必要があります。血液透析を継続するために、内シャントという腕の動脈と静脈をつないだ仕組み(バスキュラーアクセス)をつくる必要があります。この手術を当科では年間120例以上行っています。
  3. バスキュラーアクセスインターベンション
    血液透析に使われる内シャントなどが閉塞した場合、カテーテルを使って血管形成術(PTA)を行っています。2021年度は69件でした。
  4. 腎臓救急
    本院の患者さんだけでなく、静岡県東部・伊豆地区で生じた急性腎不全(急激に腎臓が機能しなくなる状態)や、透析を受けておられる末期腎不全患者さんの急激な体調不良に対応するため、緊急の場合に患者さんを受け入れられるようオンコール体制をとっています。

対象疾患

慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)

2002年の米国腎臓財団(NKF)が提唱を始めた概念です。2007年に日本腎臓学会で、日本人に適した糸球体濾過量(GFR)推算式を作成し重症度を分類する「CKD診療ガイド」が作成されましたが、2012年の改訂では重症度分類は、原因(Cause:C)、腎機能(GFR:G)、蛋白尿(Albumin(アルブミン尿):A)によるCGA分類で評価することになりました。

定義

  1. 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在があきらか。特に蛋白尿の存在が重要。
  2. 糸球体濾過量(glomerular filtration rate: GFR)が60ml/分/1.73m2

1、2のいずれか、または両方が3ヶ月以上持続する。

CKDの原因には、慢性腎炎症候群やネフローゼ症候群などの腎臓そのものの疾患、高血圧・糖尿病・動脈硬化などの生活習慣病、結石などの泌尿器科の疾患など多種多様なものがあります。CKD患者さんは透析療法や腎移植が必要となる末期腎不全(ESKD)に移行するリスクが高いことが分かっています。また、CKD患者さんは心臓や脳の血管の病気になりやすく、死亡率も高いです。
尿の異常や腎臓の形態(かたち)に明らかな異常があるか、尿をつくるはたらきが低下している患者さんは、原因が何であれすべてCKDと診断され、治療の対象になります。特に尿蛋白は、腎臓そのものの異常を示す重要なサインです。蛋白尿を指摘された場合、速やかに受診してください。

急性腎障害(AKI:Acute Kidney Injury)

定義

48時間以内の急激な腎機能低下

診断基準

  1. 48時間以内の0.3mg/dl以上の血清クレアチニン値(Cr)の上昇。
  2. 血清Cr値の基礎値から31.5倍以上上昇
  3. 6時間以上にわたって、尿量が0.5ml/kg/時間以下に低下。

急性腎障害(AKI)は、外傷・感染症などが重症化すると生じやすいですが、健康な方でも熱中症に伴う脱水や薬の副作用で生じることもあります。尿がほとんど出ない状態(乏尿)がみられること多いですが、尿量が減らない場合もあり、注意が必要です。

慢性腎炎症候群

蛋白尿や血尿が主な症状で、慢性に進行し腎不全にいたる腎臓病です。通常は自覚症状に乏しく、ほとんどの場合、健診やかかりつけ医で受けた尿検査でみつかります。蛋白尿や血尿でみつかった慢性腎炎症候群の患者さんは、腎臓に針を刺し、腎臓の組織を採取して組織の状態を観察する腎生検という検査で確定診断やその後どういう経過をたどるかを予測して治療にあたることがあります。

ネフローゼ症候群

血液の蛋白質が大量に漏れ出し、血液中の蛋白質濃度が低くなることで、浮腫(むくみ)をはじめ様々な症状をきたす状態です。原因が腎疾患によるもの(一次性)と糖尿病・血液疾患・膠原病などの全身性の疾患で生じるものがあります。ネフローゼ症候群の患者さんに対しても腎生検が行われることがあります。

急速進行性腎炎症候群

全く正常な状態から、倦怠感や風邪のような症状が数ヵ月続くうちに、腎臓の機能が失われ、腎不全にいたる恐ろしい疾患です。患者さんの数は少ないものの、腎臓だけでなく肺・脳などの合併症を伴うこともあり、死亡するリスクもあります。進行が急であるため、早期に診断できるかが、経過を左右します。

平成27年度には、慢性腎炎症候群7名、ネフローゼ症候群2名、急速進行性腎炎症候群2名、持続血尿症候群1名、計12名の患者さんに対し、腎生検がなされ、適切な診断・治療を行うことができました。

腎代替療法

進行したCKDやAKIによって、自己の腎臓の働きだけでは、生命を維持できない状態(末期腎不全;ESKD)になった患者さんに対して行われる治療です。初期では、吐き気や頭痛・食欲不振などの尿毒症症状がみられ、放置すると不整脈や意識障害が生じ、死にいたります。

腎代替療法には①血液透析、②腹膜透析、③腎移植があり、それぞれ特徴があります。 血液透析はわが国で最も普及した腎代替療法で、現在35万人のESKD患者さんが治療を受けています。血液透析は、人工腎臓を使い腎臓の代わりに血液を直接浄化します。血液透析を始める前には、手首の動脈と静脈をつないで動脈血が前腕の静脈に勢いよく流れるようにする内シャント手術が行われます。内シャント手術を受けると、腕の静脈に針を刺すことで、痛みも少なく安全に血液を効率よく取り出してきれいにすることができます。 血液透析は1回4時間程度・週3回治療を行うのが標準で、自宅や職場の近くの施設に通院して行われます。透析の無い日は、自由に過ごすことができますが、食事や飲み水の量などの制限が必要です。

腹膜透析は、あらかじめ腹壁(おへその横あたり)に挿入したカテーテル(管から)透析液をお腹へ注入して、透析を行う方法です。基本は1日4回の透析液の入れ替え(バッグ交換)を行うCAPD(連続携行式腹膜透析)ですが、夜間寝ている間のみ機械でバッグ交換を行うAPD(自動腹膜潅流)という方法もあります。腹膜透析は、自分で行う治療であり、時間や場所的な自由度が高く、食事の制限も少ないことが特徴です。一方、透析の効率は血液透析に比べて低いため、全く尿が出なくなった状態の方は透析不足になりやすいです。また、腹膜硬化症という重大な合併症を回避するため、5年程度で血液透析に切り替える必要があります。

腎移植は、ご家族から腎提供を受けて行われる生体腎移植と日本臓器移植ネットワークに腎移植を希望する患者として登録し、脳死や亡くなった患者さんから提供を受ける献腎移植があります。腎移植は、ESKDの究極的な治療ですが、腎臓を提供されるドナーが少なく、移植を待っておられる患者さんが多い状況です。

外来担当医表

急な都合により、情報を掲載できない場合がございますので、予めご了承下さい。
詳細は各科外来へお問い合わせ下さい。

教授
先任准教授
准教授
講師
赤字
女性医師
午前
内科7診

△ 若林 道郎

(一般)

清水 芳男

(一般・ネフローゼ症候群・遺伝性腎疾患)

若林 啓一

(一般・糖尿病性腎症・多発性嚢胞腎)

清水 芳男

(一般・急速進行性腎炎・糸球体沈着症)

秋元 麻衣

(一般・慢性腎臓病(CKD))

内科8診

五十畑 理奈

(一般)

午後
内科7診

矢ケ﨑 元洋

(一般・むくみ)

若林 啓一

(一般・慢性腎臓病(CKD)・糖尿病性腎症)

清水 芳男

(一般・ネフローゼ症候群・遺伝性腎疾患)

田中 新

(一般・IgA腎症・二次性高血圧症)

清水 芳男

(一般・慢性腎臓病(CKD)ステージG3~5)

医師紹介

教授

清水 芳男しみず よしお

出身大学
山形大学卒(1992年)

認定医・専門医など

  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会専門医・指導医
  • 日本透析医学会専門医・指導医
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了

専門分野

  • 慢性腎炎
  • ネフローゼ症候群
  • 慢性腎臓病(CKD)
  • 高血圧
  • 透析療法

わかばやし けいいち

若林 啓一

職位
助教
出身大学
獨協医科大学卒(2007年)

認定医・専門医など

  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会専門医・指導医
  • 日本透析医学会専門医・指導医
  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了

専門分野

  • 腎臓病全般

たなか しん

田中 新

職位
助手
出身大学
東邦大学卒(2021年)

認定医・専門医など

  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了

やがさき もとひろ

矢ケ﨑 元洋

職位
助手
出身大学
秋田大学卒(1991年)

認定医・専門医など

  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了

いそはた りな

五十畑 理奈

職位
助手
出身大学
順天堂大学卒(2021年)

認定医・専門医など

  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了

あきもと まい

秋元 麻衣

職位
助手
出身大学
順天堂大学卒(2021年)

認定医・専門医など

  • がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了

診療実績

研究

治験